双子座・蟹座・獅子座

双子座◇Gemini
●冬の星座
●21時に正中する時期 2月下旬
●二列に並んだ星が特徴的

 カストルとポルックスは、大神ゼウスとスパルタの王妃レダとの間に生まれた双子です。
カストルは荒馬を手懐けるのが非常にうまく、戦略に優れており、ポルックスは拳闘のチャンピオンでした。
二人揃って、オリンピア競技では数々の優勝をさらい、様々な冒険に参加して勇者としてギリシャ中に名前が轟いていました。
 イアソンが遠国コルキスへ大冒険の旅に出た時の事です。
二人揃って冒険に同行していましたが、途中彼らの乗った船は大嵐に遭遇してしまいました。
オルフェウスが竪琴を弾いて神に祈り嵐を静めましたがこの時カストルとポルックスの頭上に星が輝いて見えた事から、
二人は後に船乗りの守護神と讃えられる様になったのです。
 嵐の時高いマストの上で炎がチラチラ燃えている様に見えることが有ります。
セント・エルモの火と呼ばれている物ですがこれは双子の仕業とされ、
この火が見えるとすぐに嵐は収まると言い伝えられています。
 さて、彼らにはイーダスとリュンケウスという従兄弟が居ました。
イーダスは力が強く、リュンケウスは凄い眼力の持ち主でした。
なにしろ、真っ暗闇でも物を見ることが出来るばかりではなく、地中に埋められた宝物さえ見ることが出来たといいます。
コルキスから戻ったカストルとポルックスは、この従兄弟達と争う事になってしまったのです。
 事の発端は二組の双子が牛を捕まえに行ったときの事です。
四人は協力して見事沢山の牛を捕まえましたが、いざその分配をするときの事。
「一頭の牛を四等分し、一番早く食べ終わった者が半分、
 二番目の者が残りの半分を手に入れる事にしよう」とイーダスが提案しました。
他の三人も面白がって賛成し、三人がいざ座って食べようとした時、イーダスは既に自分の分を食べ終えており、
リュンケウスの分も手伝って食べるとカストルとポルックスがまだ食べているうちに牛達を全部連れて帰ってしまったのです。
 怒ったカストルとポルックスは従兄弟の家へと向かいました。
二人がやって来るのを遥か彼方から見つけたリュンケウスはイーダスに位置を教えて槍を投げさせました。
槍は見事にカストルの体を貫いてしまったのです。
カストルの死に茫然とするポルックス。
その間にイーダスとリュンケウスはポルックスの傍らまでやって来てしまいました。
イーダスはやおら近くにあった墓石を引き抜いて殴りかかりますが、ポルックスはそれを避け様にリュンケウスを槍で貫きました。
イーダスはそれを見て、突然恐怖に襲われ逃げ出しました。
 その時初めて戦いに気が付いた大神ゼウスは逃げるイーダスにイカヅチを投げつけて殺してしまいました。
 ポルックスはカストルが旅立った死の国へ自分も行こうとしました。
しかし運命は過酷でした。
カストルが母の血を濃く受け継いでいたのに対し、ポルックスは父の血を濃く受け継ぎ、永遠の命を持っていたのです。
ポルックスはどうやっても死ぬ事が出来ませんでした。
「ゼウスよ、最愛の兄弟を失っては生きて行く力がありません。私もカストルの所へ行かせて下さい。
 それが出来ないなら、貴方の息子カストルをもう一度生き返らせて下さい。その為なら、私の命を捧げます」
 悲痛な祈りを聞いたゼウスはポルックスの心に打たれました。
そしてカストルとポルックスを星座にしました。
世の中の兄弟姉妹の全てが二人を手本とし、仲良くする様にと。



蟹座◇Cancer
●春の星座
●21時に正中する時期 3月中旬
●黄道12星座の中では最も暗く目立たない星座

 ヘラクレスは大罪を犯した償いとして10年の間、ティリュンス王エウリステウスに仕え12の大冒険を行いました。
その二番目がアミモーネの沼に住むヒドラ退治です。
 ヘラクレスは、甥のイオラーオスが操る戦車に乗ってアミモーネの沼までやって来ました。
見れば沼の周囲には、水を飲みに来てヒドラの毒にやられた動物達の死骸があちらこちらに横たわっていました。
しかし肝心のヒドラの姿はどこにも見当たりません。
その時女神アテナがヘラクレスにヒドラの隠れ家をそっと教えてくれました。
女神の示した洞窟の奥からは、確かにシュウシュウ音が聞こえてきます。
ヘラクレスが火のついた矢を洞窟の奥深くに打ち込むと、眠りを妨げられ怒ったヒドラが洞窟から出てきました。
ヒドラは九つの頭を持ち、大きさは人間の二十倍もある巨大な蛇でした。
ヒドラは素早くヘラクレスの両足に絡み付き、ヘラクレスを大地に倒すと顔に毒ガスを吹きかけてきました。
「フン、毒ガスの事位先刻から承知の上さ!」
 ヘラクレスは息を止め、こん棒でヒドラの頭を散々殴りつけました。
これには流石のヒドラも怯み、ヘラクレスの足を離してしまいました。
 これを見ていたのが沼の住人、化け蟹です。
化け蟹はただ体が大きいだけで、ヒドラの様な武器は何一つ持っていませんでした。
勿論英雄ヘラクレスの強さは噂で知っていましたが、
同じ沼に住む友人のヒドラが殴られているのを見て黙ってはいられなかったのです。
無謀とは知りつつ、ヒドラに加勢しようと沼から飛び出してきました。
そして、ヘラクレスの足をその巨大なハサミでガキッと挟みました。
「痛い!何だこいつは」
 ヘラクレスはこん棒を振り上げると一撃で化け蟹を砕いたしまいました。
あまりにも実力の差がありすぎたのです。
 その間に体勢を立て直したヒドラは九つの頭からいっせいに毒ガスを吐いて攻撃してきました。
ヘラクレスは剣を抜いてヒドラに切りかかりました。
「エイ!」
 ヘラクレスがヒドラの頭を切り落とすとなんとその切り口からはすぐに新しい次の頭が生えてきたではありませんか。
別の頭を切り落とすとまた新しい頭が、別のを切るとこれまた新しい頭が・・・。
これではいくらやっても埒があきません。
 一計を案じたヘラクレスは甥のイオラーオスを呼んで言いました。
「急いで松明に火をつけるんだ。そして、俺がヒドラの首を切り落としたら、その切り口を焼いてくれ」
 ヘラクレスの予想通り焼かれた首からは二度と新しい頭は生えてきませんでした。
そしてついに最後の首、九番目の首だけが残りましたが
これがいくら切りつけても傷一つ付ける事が出来ない不死身の首でした。
 そこでヘラクレスは山のような大岩を抱え上げるとヒドラ目掛けて投げつけ、岩の下に閉じ込めてしまったのです。
こうしてヘラクレスは第二の冒険を成し遂げました。
 ヒドラと化け蟹の戦いぶりを見ていたへーラ女神は良くやったと、二つの怪物を空に上げて星座にしてやりました。
それが海蛇座と、蟹座だと言います。



獅子座◇Leo
●春の代表的星座
●21時に正中する時期 4月中旬
●銀河の密集した星座

 ネメアの森にいつの頃からか人食いライオンが住み着き、村人やとおりかかった旅人を襲っていました。
退治に向かった勇者も誰一人として戻って来ませんでした。
このライオンは実は怪物テュフォンの子で巨大な上に、その皮膚は鉄よりも硬いという怪物だったのです。
 この話がティリュンスのエウリステウス王の耳に入りました。
王のもとには自分の妻子を殺したという大罪を犯したヘラクレスが身を寄せていました。
「罪の償いに丁度良い」と、王はヘラクレスにこの怪物退治を命じたのです。
 ネメアの町に辿り着いたヘラクレスは、森の中を案内してくれる人間を探しましたが、
森の近くの住人は全てライオンに食われてしまっていて、地理に詳しい人間を見つける事が出来ません。
仕方なくヘラクレスは一人で森の中へと入っていきました。
二十日以上ネメアの森を彷徨ったヘラクレスはある日の夕暮れやっと人食いライオンに出会いました。
ライオンは今、人を食べてきたばかりなのかその口からは真っ赤な血を滴らせています。
ヘラクレスはライオンに何本も矢を射かけますが、みんなはじき返されてしまいました。
何も感じないと言いたげにライオンは欠伸をしています。
次に剣を抜いて切りかかりましたが、まるで紙ででもできているかの様にぐにゃぐにゃに曲がってしまいました。
こうなっては仕方ないと、ヘラクレスはこん棒を振り上げると満身の力を込めてライオンの頭を殴りつけました。
 バキッ!!鈍い音と共にこん棒は真っ二つに折れてしまいましたが、
当のライオンはびくともしないばかりか、再三の攻撃に怒って、物凄い勢いでヘラクレスに襲いかかってきました。
咄嗟に身をかわし、ライオンを素手で押さえつけたヘラクレスは、
三日三晩ライオンの首を絞め続けてとうとう退治してしまいました。
 この様子を見ていた女神へーラは、ヘラクレス相手に良く闘ったと、この人食いライオンを星座にしました。
へーラ女神はヘラクレスを憎んでいたからです。
こうして獅子座が誕生しました。


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